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2006年8月26日 (土)

8月6日「京中の物取り追捕逐日倍増」

8月6日
「京中の物取り追捕逐日倍増」、
 京中の物取りや追捕は、逐日に倍増した。天下すでに滅亡した。山掘(さんくつ)厳穴(がんけつ)、静かなるべきの所無し。三界(さんがい)無安の金言(きんげん)、誠なるかなこの言。
(注釈)
山掘(さんくつ)・・・山中のいわや。
厳穴(がんけつ)・・・岩のほらあな。
三界(さんがい)・・・衆生が活動する全世界。
金言(きんげん、こんげん)・・・古人の残した模範となる言葉。

「立王の事につき法皇より諮らる」
この日院に参り、定能卿を以て申し入れる。頭弁兼光を以て、仰せ下せられて云う、立王の事、思案し悩む所である。先ず、天皇のお帰りを待たれるべきや。まさに又且つ三種の神器無しと雖も、新天皇を立てるべきやの由、御占いが行われしの処、官・寮共に天皇を待たれるべき由を申した。しかも猶、この事思案する所に依り、重ねて官・寮に問われた。各数人(官2人、寮8人)の申し状は、彼是同じではない。但し吉凶半分である。此の上の事、何様沙汰有るべきや、協議し申すべしということである。申し云う、先ず次第の指図は、頗る以て非合理に依るか。先ず議定が有り。人々の意見が一決せず。ひとえに占いに訪ねるべき由、議奏の時、御占い有るべし。しかるに先立ちて以て御占い行わる。今又、かの趣に背かれるの条、太だ以てその謂われ無し。占いは再三せずと。しかるに度々に及ぶの条、また以てしかるべからず。しかして今に於いては、ひとえに占い用いられるべし。先ず重ねて良将吉神等の趣に随ひ、取捨選択有るべきか。但し、私の愚案の及ぶ所、立王の事を今まで遅らせなまけたのは、私の心は傾き思ふ所である。その故は、先ず、京都の狼藉、今に止まらない。是、天皇がおいでにならないのが原因である(是一つ)、次に当然に急ぎ征討されるべき処、平氏等が天皇及び三種の神器を具し奉り、すでに西海に赴く。天皇を立てず、征伐有り。議に於いて妨げ有り(是二つ)。

「継躰天皇剣爾なく践祚の例あり」
次に我が朝廷の習いでは、三種の神器を得ざる天皇の即位、かって例無し。しかるに継躰(けいたい)天皇臣下たり。迎えられし時、国史の文の如き、これを践祚(即位)と書く。甲申(こうしん)、天皇が樟葉宮に移る。辛卯(しんう)、三種の神器を得て即位したようだ。古来、譲位・即位の分別無しと雖も、今の文の如くば、即位以前すでに天皇と称し、又践祚と謂う。たちまち、皇居を移され、その後三種の神器を得て即位したようだ。しかればたちまち、準拠尤も合うべき由存する所である(是三つ)。
「天子の位一日も空しくすべからず」
凡そ天子の位は、一日も空しくすべきではない。政務が悉く乱れると。今まで遅延の条、万事違反混乱の源である。早速沙汰有るべし。異議有るべからずということだ。左大臣同じく参候したようだ。一所に非ず。兼光参上し、しばらくして帰り来たりて云う、申す所しかるべし。就中、征伐の為、天皇を立て奉るべき条、事の肝心である。よって早く立王の事有るべしということだ。私の案の、次第の沙汰、悉く以て違乱散々。凡そ左右する能わず、左右する能わず。未曾有の事なり。天下の滅亡、ただ此の時なり。悲しむべし、悲しむべし。

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