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2006年4月27日 (木)

11月8日 [吉記]「安徳天皇宣旨」

11月8日 [吉記]
追討の間の事の宣旨(天皇の命令書)。今日左大将に下すの処、空しくこれを返せらる。未だ理由は不明である。仍って師大納言に宣下した。今日復日(ふくにち)である。仍って昨日の日を書いた。
「安徳天皇宣旨」
   治承四年十一月七日 宣旨
伊豆の国の罪人たる流人の源の頼朝、早くも野心を持ち、朝庭の権威を軽々しくし、人民をおびやかし、くにや県をかすめ奪い取る。縡(こと)希夷に入るの間、罪ある者ょ攻め討とうするの処、甲斐の国(山梨県)の住人(武士)源の信義がみだりに賛同し、すでに月を経過した。各々魚鱗鶴翼の陣を結び、旁々(ぼうぼう)星のようにきらめく旗やいなずまのようなひかりを帯びたほこの威を輝かす。茲に因ってたくましく進むの者どもが、往々応募した。むほんを起こすはかりごとの甚だしきこと、古今未だ聞かず。ただに壮年の男子、血気盛んで働きざかりの年頃の軍旅に苦しむに非ず。兼ねて老弱の陸と海から兵糧を運ぶことを罷るに有り。下層の民の愚・身分が低い人民、鳳衙のあきらかないましめを顧みず、自ら非常に性質が悪く、人の道にそむくことの勧誘に従うか。此と云い彼と云い、責めて余り有り。仍ってその凶党を払わんが為、追討使を遣わす所なり。東海・東山・北陸等の道、強弱を論ぜず、老少を謂わず、表裏力をあわせ、逆賊を討たしめよ。就中美濃の国の勇武伝家の者、弓馬長芸の輩、多くその聞こえ有り。尤も採用に足る。殊に彼等に命令し、その辺境の要害を塞ぎ、通関の防御に備えしめよ。すなわち国を憂える貞節な心を励まし、忘身の接戦を致すべし。兼ねて又偏列の間、兵卒の隊伍の中、その風雅な心に非ず、凶悪に従い仲間になる。この旨を熟察し、反善の過ちを悔やむべし。地の続くかぎり皆天子の人民である。天下は悉く王者なり。天子のことばの旨誰かおとなしく従わないことはない。若しくは執鋭不撓の夫有り、臨時の功績を立てれば、その勤節を馬汗に量り、以てただにあらずの大きな賞を賜わるべし。宣を遠近に布告す。つまびらかに詳細を知らしめよ。
                    蔵人頭左中弁藤原朝臣経房奉る

馬充橘公今日入り来りて言う、追討使の平惟盛朝臣以下は五日に入京がおわるのは一定であるようだ。日来次第に詳細に以てこれを語る。
(藤原経房:「吉記著者」)

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