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2006年2月15日 (水)

9.6 「風聞・伝聞は事実か」

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 兼実は平家その他の武家に反感を抱いていた。当然である。兼実は天皇の後継問題に平家や義仲が口出しするのが不愉快だった。これは現代でも同じでガードマンに雇った男が家の跡継ぎはあいつがいいなどと口出ししたら、不愉快である。
 情報を伝える側も義仲の悪評を大袈裟に伝える方が兼実が聞き入れる。良い評判を伝えてもいい顔をしない。それなら悪評のみ伝えよう。捏造しても話そうとなる。これは現代でもある話しで、イラクが核兵器を保有している確かな情報があるとのことで、イラクに進攻したが、実際には核兵器は無かった。
 このように情報は集める側が公平でないと偏った情報が集まり易い。なぜか頼朝の上洛を期待しているので、頼朝上洛すの風聞、伝聞、或人云うは多い。実際の上洛まで何回あるか。数えてみた。8回以上。10回。やはり伝聞、風聞の10分の9は誤りか。
 兼実は当時右大臣であり、後には太政大臣も務めた人物である。その人の日記だから間違いは無いだろうと誤解している小説家・研究者が多い。高校・大学の教師でも、「玉葉」を頭から信じて、記述は真実と思い込んでいる人が多い。朝廷の行事、儀式の記述は間違い無いと思うが、「玉葉」の風聞・伝聞・或人云うはあやしいと、敢えて反論するものである。研究者の一層の検討を期待する。
 火の無い所に煙りは立たぬという言葉もあるが、風聞・伝聞は最初の事実の見聞からいかに変遷するか、簡単な「伝言」ゲームや「伝言」実験でも良く知られている事である。兼実の日記のみで決めつける事は出来ない。兼実がそのような風聞を聞いたのは事実かもしれない。しかしその風聞の元の事実があったかどうかは定かでは無い。
「玉葉に見られる表現の大袈裟なことは大変なものである」と堀田善衛氏は「定家明月記抄」で述べている。

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