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2006年2月14日 (火)

9.5 「兼実款状」款状(かんじょう、嘆願書)

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「玉葉」元歴元年12月7日
「放火群盗等を禁遏(あつ、とどめる)されるべき事」
 右天下騒乱以後、海内静かならざるの間、五畿七道の海陸の路塞がり、調庸祖税の貢ぎすでに空し、適住反の境、災難猶免れず、或いは炎旱(えんかん、ひでり)の愁いに依り、悉く亡損の地と為す。或るいは武士の妨げを恐れ、敢えて子のごとく来たる民無し、之に加え山門の厳穴未だ安全の栖(せい、すむ)を聞かず、社内寺辺併しながら合戦の場と為す、此の如しの間、貴賤忽ち安堵の計りを失う、し素各危困の嘆きを懐き、国土の凋、年を逐うて増すと雖も、朝家の大営茲に因りて減ずること無し、富者は倉廩(りん、くら)を空しくし、以て僅かに身命を存す、貧者は衣食無く、以て飢え寒さ忍び難し、何況や近曾以来、放火間々起こり、盗賊頗りに聞ゆ、月卿(げっけい、公卿)雲客(うんかく、殿上人)の居所を嫌わず、洛内城外の舎屋を論せず、連夜の災い日を追って絶えること無し、啻(し、ただ)資材を奪ふのみに非ず、殆ど又死傷に及ぶ、万人の歎只此の事に在るのみ、逆党の征伐に於いて、旁々籌(ちゅう、はかりごと)策を運(めぐら)すと雖も、盗賊の厳制に至りては、速やかに刑法行うべし、鎮乱の政、邇(に、じ、ちか・い)より遠きに及ぶ故なり。早く有司並びに武士等に仰せ、慥(ぞう、たしか、あわただしく)禁遏(あつ、とど・める)されるべきか。其の間の子細宜しく有識の輩を訪ね、無為の謀を廻らされるべきなり。此の沙汰もし遅引せば、人家忽ち滅亡し、衆庶いよいよ度を失うものか。(以下省略)
高階泰経大蔵卿殿
(現代文)
「兼実の嘆願書)
「放火や集団強盗を制圧されるように願う事」
 右天下の争乱が開始して以後、国内は不穏な状況であります。五畿(京都近県)七道(全国)の海路や陸路は塞がり、各種の国税や貢ぎ物などは京都へ集まらず、すでにからであります。住むに適さない状況となりました。災難は猶免れず、或いはひでりの愁いに依り、悉く土地は損消しました。或るいは武士の妨害を恐れ、敢えて子のごとく来たる人民はいません。之に加え寺の山門の厳穴ですら未だ安全のすみかとは聞きません。神社内や寺の周辺も合戦の場と化しました。此のような状態では、身分の上下無く安心な生活は確保出来ません。僧も俗人も危険と困難の嘆きの思い、国土の疲弊は、年を逐うて増すというのに、朝廷の大工事は、このような現状でも減ずること無く行われています。富裕の者は蔵の物を減らしながら、以て僅かに身命を永らえています。貧乏な者は衣食も無く、以て飢え寒さは忍び難いものです。まして近頃、放火が度々起こり、盗賊事件も頗りに聞えます。身分の高い人の居所であろうと、京都の内外の舎屋であろうと、連日連夜の災いは日を追って連続して発生しています。ただ資材を奪うのみでなく、殆ど又死傷事件になります。全ての人々の歎きは、只此の事に在ります。反乱軍の征伐に於いて、色々と計略をめぐらすと雖も、盗賊の厳しい取り締まりについても、速やかに法に基づく処罰を行うべきです。乱を鎮める政治は、近くより遠きに及ぶ故であります。早く官吏や武士等に申し付け、確実に制圧すべきであります。其の方法などの詳細は宜しく有識者に尋ね、無為の計略をあれこれ考えるべきものです。此の処置がもし遅引すれば、人家は忽ち滅亡し、人民庶民はいよいよ恐れ驚き狼狽してとりみだすものであります。(以下省略)
高階泰経大蔵卿殿

(解説)

かなり穏やかに書いてあるが、京都内外の治安が悪いと嘆いている。中身は義仲在京中の8月から9月に記述したものと良く似ている。ここ数年天下の状況は悪いままだ。

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